レグリスは漢方の味 - ジンジャーの薫り・・・仏田舎手帖

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レグリスは漢方の味

  • 2014.12.08

ナナに頼まれて、パン屋さんにある駄菓子コーナーで1本の棒を買ってきました。30サンチームでした。
(長さをお箸と比べてみました)



カラフルで陽気な飴玉やグミが駄菓子ケースに並んでいる中、これはかなり地味。地味すぎて、他の駄菓子から仲間はずれになっているのではないかと思わずにはいられない異色さです。
子供たちの夢をそそるとは到底思えない姿かたちです。
しかしながら、それをナナが欲しがった理由は、「チューインガムも飴も食べたくないけど、口寂しいときにかじるのにピッタリだから。」でした。

ハイ、と渡すと、喜んでカジカジしています。
甘くておいしいんだそうな。
義父もこの棒が子供の頃のおやつだったそうです。
実はコレ、レグリス(Reglisse)という植物の根っこ、そのままなんです。
そしてレグリスは、漢方では甘草(カンゾウ)と呼ばれている生薬のことなんです。


(↑すでにちょっと齧ってしまったところです)

・・・うーん、わからん。だって、本当にマズいのに!
フランスではレグリス味と言えばグミや飴になっていて(こんな風に)、子供たちに昔から人気のある定番の味なのですが、どこが美味しいのか・・・?(ドイツにもイギリスにも、以前スウェーデンに行ったときも沢山ありましたから、ヨーロッパでは普及しているもののようです)
周りの日本人の友達に聞いても、ネットで見ても、日本人には思いきり不評の味です
それがヨーロッパでは好まれているのですから、子供のときから味覚に違いがあるのかしら、とフシギです。

でも、こういうものがおやつだなんて、フランスの日常には薬膳が息づいているんですね。

ナナが嬉しそうにかじっている姿を「ほんとによくわからんわ・・・」と思いながら見ていたら、突然、甦ってきたイメージがありました。

それは、手のひらサイズの茶色い四角い薄紙の上に載っている、なにやら正体不明の干からびた木片や葉っぱなどの寄せ集めでした。

子供の頃病弱で長い療養を余儀なくされ、退院する見込みのない療養施設に行くしかなくなっていた私でしたが、西洋の薬では一向に良くならず、副作用でますますおかしくなっていると疑問を感じた母が、娘を治したい一念で探し当てたのが、東京銀座にある中将湯ビル診療所でした。
当時、漢方薬は今のようにどこでも手に入るようなものではなく、まったく普及しておらず、保険もきかないもので、そんな中、中将湯ビル診療所は当時の漢方薬の第一人者の先生方が集まり、漢方薬の効能を信じて熱意を持って診療を行っている唯一の場所でした。

今考えても、よくそんなところを見つけ出したものだと、母の時代を先取りした感覚に脱帽しますが、娘を救いたい一心の母親の愛の偉大さというものは、山よりもたくましく、海より深く、天のように聡明なものだと感じます。
しかし実際に自分が母親という立場になってみると、そこまで賢く出来るだろうか、と自問せずにはいられませんが。

さて、そこで出される薬は、今のように錠剤や顆粒にはなっておらず、様々な生薬を細かくカットしたものを計って茶色の紙に包んでくれたものでした。それを家で時間をかけて煎じて、どす茶色の汁になったものを、毎日飲むというものでした。

その茶色の汁の、匂いと味の不味かったこと・・・。
何種類もの生薬の混ざった味の中に、カンゾウの味が強烈だったことは私の味蕾に刻み込まれています。
甘いのに、なんともいえない不味さ。
甘さというものは、本来人を魅了する味のはずなのに、これに関してはこの甘みがなければもうちょっとマシな味なのではないだろうか、と子供心に何度も思ったものです。
これが何年にも渡って私を支えてくれた成分であることも承知していますが。。。

なので、初めてこちらでレグリスのグミを食べた時、もちろん甘草だとすぐにわかりましたが、味についての記憶であって、形についてはわかりませんでした。

でも、ナナがかじる棒を見ながら、その紙包みに入っていた葉っぱや木片の中に、この棒が小さくカットされているものが入っていたことを、輪切りの姿を、しっかりと思い出したのです!
あぁ、間違いなく、これだった、これだった!これだったのか!

私がイヤイヤ飲んでいた煎じ薬の甘草を、娘はお菓子としてかじっている。
なにかフシギに懐かしいような、娘が健康でいてくれることに安心するような、なんとも言えない気持ちで微笑ましくなりました。


中将湯ビル診療所は今

甘草についての詳しいサイト。とても面白いです。甘草アカデミー

中将湯ビル診療所の煎じ薬を飲むうちに、私は少しずつ快方に向かっていきました。そしてその後、千葉県の習志野市大久保にある細川医院という小さな小児科の診療所で、保険が適応する漢方薬を使って処方してくれることがわかり、そこで長いことお世話になりました。
細川先生という穏やかなおじいちゃま先生と、同じように穏やかで品の良い奥様が助手としていらして、いつでも患者の味方となって処方して下さいました。
今でも、細川先生に心から感謝の気持ちでいっぱいです。私の母もいつも心の中で手を合わせているそうです。

その後母は千葉大の薬学部の夜間の漢方薬コースに聴講生として通わせてもらうことになりました。薬学部の学生さんに混ざって、母心の燃えるような想いを胸に灯して、毎回最前列に座って必死でノートにかじりついていたそうです。

おかげで、私は10代の半ばから人生を再スタートさせることができ、学校に行けて社会人にもなり、フランスくんだりまで来て子供を生むことも出来て、娘は元気にレグリスをかじっている、というわけです。

レグリス1本から、いろんな思い出が甦ってきて、長くなってしまいました。
個人的な思い出話ですが、読んで下さってありがとう。

体の弱いお子さんも、病気のお子さんを持つ親御さんも、どうか今挫けずにいて下さい。
ご自分を責めないで、最善を尽くして、あきらめないで下さい。
よいお導きがきっとありますように。
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