緑のたまご - ジンジャーの薫り・・・仏田舎手帖

緑のたまご

  • 2004.07.22
ママッ、ママーッ!!
トトがはずんだ息で、身体中を弾丸のように飛ばしてやって来ました。

玄関で靴を脱ぐのももどかしく、足首を大きくゆすって靴を飛ばし、私の手首に躍りかかってきました。
息を整える暇もないのですから、説明する暇もありません。
重い牡牛を引っ張るようにグイグイ私の手首を引っ張って、庭に向かって走り出しました。

葡萄の冠をかぶった庭の塀の前に来ると、ようやく歩調をゆるめました。
草を踏む音が響かないように、急に忍び足です。
私の手首は掴んで離さないまま、目線と矢印を作った人差し指で、見るべき方向を指示しました。
そこには・・・

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葡萄の蔦の横に、空いている小さな穴がありました。
まるで野ウサギのよう。こんなところに壁の穴があったとは、普段は目にも留めていませんでした。

それでも私にはまだ、見るべきものがわかりませんでした。
キョトンとしていると、トトが「鳥が巣をつくったんだよ!!」と言いました。
あぁ!この中に鳥の巣があるのね・・・
そうっと近づいてみました・・・


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お母さんでしょうか、じっと卵を温めているのでした。
こんなところによく見つけたわねトト、子供って発見の天才です。
何ていう鳥でしょう。
私たちが見ているのを知ったら、安全な場所じゃないと思って怖がらせてしまうかと思い、2メートルほど離れたところから首を伸ばして見つめました。
暑さをしのぐにも、雨宿りにも、大きさも、ぴったりの場所ですね。
何にもしないわよ、安心してね。

しばらくして、トトがまた私のところにやって来ました。
「ママ!鳥がいないよ!どこかに行っちゃったよ。もうもどって来ないの?」
警戒させてしまったのでしょうか。
あわてて見に行ってみると、母親の姿はありませんでしたが、巣の中にはちゃんと卵が残してありました。3個、仲良く巣の中で体を寄せ合っています。

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「大丈夫、きっと晩ご飯を食べに行ったのよ。子ども達を置いていったのだから、きっと戻ってくるわ。子どもを残していける、ってことは、私たちに取られないって信用してるからだと思うわよ。」と後半のは自分の身に置き換えて言ったセリフです。
「この卵、取っちゃったらどうなるの?」
「それはそれは悲しむでしょうよ。」
「おいしいのかなぁ、どんな味かなぁ。どうして食べちゃいけないの?」
そうねぇ、どうして食べちゃいけないんだろう。。。でもとにかく取っちゃダメよ。お母さんが一生懸命暖めてるんだからね。

翌朝見ると、母鳥はちゃんと戻ってきており、卵の上で身じろぎもせず目を開けていました。
緑に黒い斑点のある卵は、黒鶫(くろつぐみ)merleという鳥だそうです。



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